年別アーカイブ:2020年
新しいHIV確認検査法について
HIVに感染しているかどうかを調べたいとき、妊娠初期の検査や、手術前検査で行われるHIVのスクリーニング検査は、主にHIV-1抗原とHIV-1/2抗体を同時に調べる検査(HIV抗原抗体同時スクリーニング検査法)が標準になっています。 この検査の結果が「陽性」や「判定保留」の時は、ウェスタンブロットによる抗体検査法(WB法)とHIV-1核酸増幅検査法(HIV-1 NAT法)を同時にするHIV確認検査をすることになります。 しかし、WB法は、HIV-1とHIV-2を別々に実施しなければならないので、HIV-2 ...
Q70. HIVスクリーニング検査で陽性が判明しました。どうしたらよいですか?
A. 偽陽性の可能性も含めて説明し、確認検査を実施します。 保健所やクリニック、妊婦健診や手術前の検査で行っているHIVの検査は、HIV抗原抗体同時スクリーニング検査法と呼ばれ、結果が「陰性」、「陽性」、「判定保留」のいずれかの結果が出ます。スクリーニング検査における「判定保留」は、「陽性」と同様に確認検査を実施します。「判定保留」か「陽性」となった方は、スクリーニング検査をしたところに問い合わせをしてみてください。 ・結果が「陰性」の場合、①感染のリスクが無ければ「感染していない」と診断します。②感染の ...
Q69. セックスの後、のどに違和感があります。性病の可能性はありますか?
A. 咽頭クラミジア、咽頭淋病、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、ヘルペス、梅毒、HIVが考えられます。 性行為の多様化によって、オーラルセックス(フェラチオ、クンニリングスなど)で性感染症の原因になる菌やウィルスが、咽頭や、扁桃腺に感染することがあります。しかし、それが風邪の流行時期であれば、溶連菌やインフルエンザウィルスなどの風邪による上気道炎、扁桃炎ということも考えられます。 ただし、「性行為の後から」ということを考えると、性行為によってうつった咽頭の性感染症の可能性も考えられます。 一般的に、淋菌は ...
Q68. 外陰部の片側が腫れて痛いです、性病と関係がありますか?
A. バルトリン腺膿瘍の可能性があります。性感染症の菌が原因のこともあります。 バルトリン腺は、腟の入り口付近の左右にある分泌腺です。腟の入り口付近を潤わせて、性交時の潤滑を良くする粘液を分泌します。口の中に例えると、唾液を分泌して口の中を潤わせている唾液腺とだいたい同じと思っていただくと良いと思います。 バルトリン腺の導管の開口部は、腟の入り口付近にあり、なんらかの菌が感染すると、バルトリン腺の開口部付近で炎症を起こり、開口部が腫れて閉塞し、内部に膿がたまって膿瘍になります。腫れの程度は、腟の入り口付近 ...
細菌性腟症って何?細菌性腟炎との違いについて
「おりもののにおいがキツくなった」、「以前とおりものの性質が違う」などおりものの変化があったときは、細菌性腟症の可能性があります。 細菌性腟症とは? 細菌性腟症は、以前は非特異的腟炎と呼ばれ、性感染症の原因菌以外の菌によって起こる腟炎と考えられていましたが、現在は、腟の善玉菌である乳酸桿菌(Lactobacillus属の菌)が減少して、代わりにガードネレラ属の菌、ヘモフィルス属の菌、嫌気性菌やマイコプラズマ属、ウレアプラズマ属などが過剰に増殖し、これら複数の菌が「バイオフィルム」を形成して起こる病態として ...
Q8. 不正出血があるので、ピルを飲んだら治りますか?
A. 不正出血の原因を調べるのが先です。 「5カ月前までピルを飲んでいて、止めてから順調に月1で生理が来ていたけど、今月だけ生理以外の不正出血があるから、またピルを再開したい」と、ギャル風のお嬢さんが来院されました。 私は、「ピルを再開する前に、不正出血の原因を調べましょう」と伝えましたが、これが少し気に障ったのか、ムスッとされてしまいました。 不正出血の原因は、卵巣の機能不全以外にも、性感染症、子宮頸がんの初期、子宮頸部のびらん面からの出血など、いくつかあります。 特に、子宮頸がんは、初期の症状である「 ...
Q67. おりものがイカ臭いのは、性病の症状ですか?
A. おりもののにおいだけでは性病かどうかの判定はできませんが、細菌性腟症の可能性があります。 「今の彼氏と付き合うようになってから、おりものがイカ臭くなりました。性病をうつされた可能性がありますか?」という女子大生から質問がありました。 「イカ臭い」は、「魚っぽい生臭いにおい」と表現されることもありますが、主に嫌気性菌の働きによって発生するアミンという物質のにおいと言われています。 健康な腟内には、善玉菌である乳酸菌が存在しています。乳酸菌は乳酸を発生させるので、甘酸っぱいような臭いは健康なおりもののに ...
Q66. おりもの検査でGBSが陽性になりましたが、なぜすぐに治療しないのですか?
A. 出産時の破水や陣痛発来時に抗生剤の点滴をしますが、症状があれば出産時でなくても腟錠での治療対象になります。 来月お産予定という妊婦さんから、このような質問がありました。 GBSとは、正式名はStreptococcus agalactiaeという名前で、和名ではB群連鎖球菌(Group B Streptococcus)の頭文字をとってGBSと言い、肛門、腟、会陰部の皮膚にいると言われています。GBSは、性感染症の菌ではありませんが、Sex associated disease(性行為関連疾患)の菌に位 ...
Q7. ビタミンCとピルは併用しても良いですか?
A. ビタミンCとビタミンB12は摂取した方が良いですが、高濃度ビタミンCは気を付けた方が良いでしょう。 ビタミンC(アスコルビン酸)は、抗酸化作用による美白効果やコラーゲンの生成と維持の作用があることから、美容系のサプリメントとして利用されることが多いです。このように美意識の高い女性の中には、ピルの服用中に、ビタミンCの摂取を心がけていらっしゃる方も多いと思われます。 さて、ビタミンCとピルとの関係については、いくつかの論文があります。 「ピルを服用している人は、ピルを服用していない人に比べて、ビタミン ...
Q65. 不妊症と関係のある性感染症は?
A. 骨盤内炎症疾患(PID)は不妊症や異所性妊娠等の深刻な後遺症を起こします。 「妊活を頑張ってますが、なかなか妊娠しません。何らかの病気になっているんじゃないかと不安です」という既婚の女性からのご相談です。そして、症状を尋ねると、「ジャンプすると下腹部が痛い」と教えてくださいました。 これを聞いて、骨盤内炎症疾患(PID)の可能性があると考えました。 不妊症の原因となる骨盤内炎症性疾患(PID)の原因菌は、性感染症に限らず、性感染症以外の一般細菌でも起こりえます。(もちろん、卵巣腫瘍の捻転・破裂、異所 ...
Q64. 性器ヘルペスの再発抑制療法は、やっても無駄ですか?
A. 再発抑制療法によって、約半数で再発を抑えられます。 私のクリニックには、マイコプラズマ・ウレアプラズマの相談が多いですが、それと同じくらい性器ヘルペスについての相談も多いです。先日「性器ヘルペスの再発抑制療法なんてやっても無駄だと、他のクリニックで言われてここに来ました」という患者さんがいらっしゃいました。私はこれを聞いて、まだそんなことを患者さんに向かって平気で言う医者がいるんだ、と思って悲しくなりました。 性器ヘルペスの再発抑制療法は、年に6回以上性器ヘルペスを再発する患者さんに対して、バラシク ...
生理不順と性感染症の関連について文献的考察をしてみた
Q63の「性感染症が原因で生理不順になりますか?」について、クラミジア感染やマイコプラズマ感染があった場合に生理不順になる可能性があると回答しました。 このことについて、調査した文献を元に解説したいと思います。 "Al-Farraj DA, Moubayed NM. The association between sociodemographic, hormonal, tubo-ovarian factors and bacterial count in Chlamydia and Mycoplasma ...
Q63. 性感染症が原因で生理不順になりますか?
A. クラミジアやマイコプラズマの感染によって生理不順になることがあります。 最近、私のクリニックにいらっしゃる患者さんの中に、「生理不順になったので絶対にクラミジアだと思う」と言って性病検査を希望される方がいました。ところが、その後も一人だけではなく何人も、同じように生理不順で性感染症の検査を希望される方が増えていることがわかりました。 性感染症が原因で本当に生理不順になることがあるのだろうか?と、私はにわかに信じがたかったので調べてみました。 まず、生理不順(月経不順)についてですが、正常な月経の周期 ...
Q6. すり抜け排卵って何ですか?
A. ピルの効果が減弱し、卵巣機能が再開して排卵することを言うようです。 「すり抜け排卵」という言葉は医学用語ではありません。インターネット造語と言った方が良いかもしれません。いろいろ調べていると、インターネットでは「ピル服用者の飲み忘れや抗生剤の併用による予期しない排卵=すり抜け排卵」と呼ぶようです。ピルのFAQのQ5で述べたように、抗生剤の併用によってピルの効果は減弱しないことがガイドラインにもちゃんと記載されています。ピルの服用忘れ以外にピルの効果が減弱する原因は、下痢による吸収障害、嘔吐によってピ ...
Q5. 低用量ピルと抗生剤や鎮痛剤を併用しても大丈夫ですか?
A. ほとんどの抗生剤や鎮痛剤を併用しても大丈夫です。 ただし、リファンピシンという結核の治療薬とHIV治療薬の一部は、ピルの効果を減弱することが分かっています。これらのお薬は結核やHIVにならなければ処方されないので気にしなくて大丈夫です。風邪や性感染症の治療で処方される抗生剤は、ピルの効果に影響を及ぼしませんので併用可能です。 鎮痛薬のアセトアミノフェン(カロナールなど)は、ピルの効果を増強し、反対にアセトアミノフェンの効果を減弱させる可能性がありますが併用可能です。その他の非ステロイド系鎮痛薬(ロキ ...