Q63の「性感染症が原因で生理不順になりますか?」について、クラミジア感染やマイコプラズマ感染があった場合に生理不順になる可能性があると回答しました。
このことについて、調査した文献を元に解説したいと思います。
"Al-Farraj DA, Moubayed NM. The association between sociodemographic, hormonal, tubo-ovarian factors and bacterial count in Chlamydia and Mycoplasma infections with infertility, Saudi J Biol Sci. 2019 Jan; 26(1): 20-23"
"Saudi Journal of Biological Sciences"というサウジアラビアの医療系の雑誌の2019年1月号に、不妊症の原因の中で、クラミジア感染症とマイコプラズマ感染症がどの原因と関連があるかについて調査した文献が見つかりました。昨年の文献ですので、最新のものと考えてよいと思います。ここでいうマイコプラズマは、Mycoplasma genitaliumのことです。
内容を要約すると、不妊症の原因には、卵巣機能不全や卵管閉塞、男性因子など様々ありますが、そのうち骨盤内炎症疾患へ波及する可能性がある性感染症は、女性の不妊症の原因の40%を占めると言われています。そこで、19歳~46歳までの100人の不妊の既婚女性グループと100人の不妊ではない女性グループに分けて、クラミジア感染and/orマイコプラズマ感染が陽性だった場合、それが不妊症の原因となる疾患や症状に影響しているのかを調べた観察研究です。
不妊症グループと不妊症ではないグループ全体の結果は、クラミジアand/orマイコプラズマの感染陽性者は、不妊のグループに多く、若い年齢(30歳未満)で多く、生理不順があること、流産歴と関連があることがわかりました。
不妊症グループのサブ解析では、クラミジアand/orマイコプラズマの感染が陽性であることは、ホルモン因子、卵巣因子、生理不順、流産歴と関連していました。さらに、このグループの回帰分析では、ホルモン因子、卵巣因子、生理不順は、クラミジア及びマイコプラズマ感染陽性の最も重要な因子であることが示されました。
一方、不妊症ではないグループのサブ解析では、卵巣機能不全、卵管閉塞、男性因子、排尿時痛、不正出血、おりもの異常、下腹部痛、骨盤内炎症性疾患、子宮頚管炎、腟炎とクラミジアand/orマイコプラズマ陽性とは関連はなかったということでした。
要するに、不妊症であろうとなかろうと、生理不順であることはクラミジアやマイコプラズマ陽性と関係があるということが書かれていました。不妊症でない人では、クラミジアやマイコプラズマが陽性であっても、ホルモンの異常や卵巣の異常は無いということですので、クラミジアやマイコプラズマによる感染で、炎症が卵巣に波及しなくても生理不順は起きると考えられます。
ではどうして卵巣に炎症が波及しなくても生理不順が起きるのか?については残念ながら書かれていませんでした。
結論的には、クラミジアやMycoplasma genitaliumが陽性の場合は、生理不順が起きる可能性もあり、逆に、生理不順がある場合にはクラミジアやMycoplasma genitaliumが陽性である可能性や、不妊症にも関連する可能性があるということだと思います。
生理不順の方は、クラミジア、マイコプラズマの検査をした方が良いかもしれませんね。