A. 再発抑制療法によって、約半数で再発を抑えられます。
私のクリニックには、マイコプラズマ・ウレアプラズマの相談が多いですが、それと同じくらい性器ヘルペスについての相談も多いです。先日「性器ヘルペスの再発抑制療法なんてやっても無駄だと、他のクリニックで言われてここに来ました」という患者さんがいらっしゃいました。私はこれを聞いて、まだそんなことを患者さんに向かって平気で言う医者がいるんだ、と思って悲しくなりました。
性器ヘルペスの再発抑制療法は、年に6回以上性器ヘルペスを再発する患者さんに対して、バラシクロビルという抗ウィルス薬を毎日1錠ずつ服用する方法です。これは保険適応の再発回数ですが、自費診療であれば、再発回数に関わらず治療することが可能です。
この再発抑制療法により、40%の患者さんは1年間に一度も再発しなかったという報告があります。しかし、もともと年10回以上再発があった方は、抑制療法中でも再発することがありますが、その場合は、バラシクロビルを1日2回5日間まで一時的に増量し、症状は軽度で済みます。難点は、毎日1錠ずつ服用しなければならないことですが、抗ヘルペス薬を長期間服用しても副作用や耐性化はほとんどありませんので、安全に服用できます。
しかしながら残念なことに、この再発抑制療法を積極的に勧めない医師もいます。「抗ウィルス薬を毎日1年間服用することは肝臓や腎臓への負担があるからやめた方が良い」、「性器ヘルペスは一度かかったら根治はできないので再発抑制療法なんてやっても無駄だ」と、患者さんに言う医師がいます。薬の副作用について説明することは医師としての義務ですので、説明した方が良いと思いますが、再発抑制療法を否定するのではなく、定期的に肝機能腎機能の検査をすれば安全に服用できます。そして、何より性器ヘルペスの患者さんは、度重なる再発によって快適な日常生活を送れないことが問題であり、このことがストレスになって精神的に落ち込んでしまったり、恋愛に積極的になれなかったり、家族に迷惑が掛からないように誰にも相談できずにいることが多く、こういった方に対して再発抑制療法は、一縷の望みなのです。藁をもすがる思いで訪ねた医師に治療を勧めてもらえなければ、絶望のどん底に突き落とされたも同然です。
性器ヘルペスの再発抑制療法は、日本の厚生労働省が保険診療で認めた治療方法ですので、それを否定することは日本の医療を否定することと同じです。このような無学な誤解を持ち続ける医者が減ることを願うばかりです。