A. 2つの病院の検査方法が違うためです。
ウレアプラズマには、病原性を持つ菌としてウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリティカムの2種類の菌があります。
ウレアプラズマの感染による症状は、菌が産生するアンモニアによって粘膜障害が引き起こされるため、女性では腟の違和感、かゆみ、排尿時の痛み、性交時痛などで、男性では、尿道のかゆみ、排尿時の痛み、亀頭包皮炎などがあります。一方、すべての人に症状が現れるわけではないので、常在菌と考えている医師もおり、いまだに適切に治療されないことがあります。しかし、妊娠中のウレアプラズマ感染によって絨毛膜羊膜炎を起こす確率が増え、その結果、流産や早産の割合が高くなったり、生まれてくる赤ちゃんにも肺炎を起こすことが知られています。私は、これだけ悪い影響を及ぼすことが明らかであるのに、見過ごされていることに疑問を感じており、ウレアプラズマは積極的に除菌すべき対象であると考えます。
さて、今回の患者さんは、A病院でおりものの検査をしたところ、ウレアプラズマ・ウレアリティカムが陽性となり、A病院で治療されましたが、なかなか治らないため、B病院である当院で再検査を実施したところ、今度はウレアプラズマ・パルバムが陽性になりました。
A病院の結果を拝見したところ、腟分泌物培養検査で検査をされており、B病院では、PCR法によって検査がされていました。A病院とB病院では、検査方法が異なっていました。
A病院で実施した腟分泌培養検査の方法は、おりものを菌を繁殖させるために専用の培地に擦って、4~5日間培養して菌を増やし、その培地にコロニーという菌の集団が形成されるのが観察できると「陽性」の結果になります。この方法の良い点は、細菌性腟炎や細菌性腟症の疑いで検査が保険適用になり、検査費用が安いことです。悪い点は、ウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリティカムの区別が難しいこと(区別するには人の眼で直接判断するため熟練を要する)、結果が判明するまでの期間が1週間ほど必要なことです。
一方、B病院で実施したPCR法は、ウレアプラズマのDNA断片を検出する遺伝子検査になります。この方法の良い点は、結果が判明するまでの期間が培養に比べて短いこと、ウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリティカムを区別できること、培養法よりも感度と特異度に優れていることです。悪い点は、検査にかかる費用が培養検査よりも高いことです。
したがって、この患者さんのウレアプラズマは、PCR法で行った検査の方が正しい検査結果ということになります。
では、ウレアプラズマ・パルバムとウレアプラズマ・ウレアリティカムをPCR検査で区別することに何の意味があるのでしょうか?
その質問の答えは、次回のクエスチョンで!