ヘルペス感染症には、1型ヘルペスウィルス(HSV-1)と2型ヘルペスウィルス(HSV-2)による感染の2種類があります。HSV-1は、顔面の三叉神経節に潜伏感染し、口唇ヘルペスとして再発症状を繰り返します。HSV-2は腰仙髄神経節に潜伏感染し、外陰部の水疱、潰瘍などの症状をくり返します。
ヘルペスウィルスの検査には、血液検査で調べる抗体の検査と、病変部位からの抗原の検査があります。
今回はヘルペスウィルス抗体の検査について解説します。
①HSV-1に対する抗体の検査
②HSV-2に対する抗体の検査
③ヘルペスウィルスIgM抗体とIgG抗体の検査
があります。
①は、HSV-1に感染したことがあるかを調べる検査。
②は、HSV-2に感染したことがあるかを調べる検査。
③は、HSV-1またはHSV-2のどちらか分からないが、いつ感染したのか、未感染なのかがわかる検査。
です。
ヘルペスウィルスに一度でも感染したことがあれば、抗体が作られ、一度も感染したことが無ければ、抗体は作られていないことになります。
抗体には、いくつかの種類があり、一般的に抗体検査というと、IgM抗体とIgG抗体を調べる検査になります。
IgM抗体は、病原体に初めて出会ったときにリンパ球(B細胞)から素早く産生され、感染の初期に働きます。
IgG抗体は、病原体に結合する能力が高く、血中に留まる時間も長いのが特徴です。
ヘルペスウイルスに感染後、ヘルペスウィルスIgM抗体は、感染後11~15日目で100%陽性になり、6カ月後ころに消失していきます。
ヘルペスウィルスIgG抗体は、やはり感染後11~15日目で93.3%陽性になり、その後も血中に残ります。
①はHSV-1のIgGを、②はHSV-2のIgGを調べます。
これは、過去に感染したことがあれば、生涯(+)で推移し、陰性になることはありません。
一方、③の検査では、IgMとIgGの組み合わせで、ヘルペスウィルスに最近感染したかどうかがわかります。
・IgM(+)かつIgG(ー)は、ごく最近の初感染。
・IgM(+)かつIgG(+)は、再感染。
・IgM(-)かつIgG(+)は、過去の感染。
・IgM(-)かつIgG(-)は、未感染。
です。
IgMが(+)の意味は、ヘルペスウイルスの感染が半年以内くらいにあったことを示しています。
感染があった後、すぐに症状が出るとは限らないので、「症状が出た=感染した」ということではありません。
また、③の検査では、HSV-1とHSV-2の区別ができないので、性器ヘルペスなのか口唇ヘルペスなのかの判別はできません。また、検査の結果の解釈には注意が必要であり、むやみに抗体検査を実施して感染時期を推定することは避けた方が良いと考えます。