前回の記事でも梅毒のパンデミック(流行)についてお話ししました。
本日、2019年12月22日時点の梅毒患者数の速報値が出ました!
なんと、6435例で依然として高値で推移しています。ちなみに、一昨年(2018年)は、7001人でした。ここで上げ止まってくれれば良いのですが・・・。
この数値は、あくまでも医療機関を受診して梅毒とわかった患者さんの数であり、実際の梅毒患者数はもっと多いと思われます。梅毒患者の発生数が最も多いのは東京都で、次いで大阪府、愛知県、兵庫県、福岡県の順です。
「感染症法」によって梅毒は5類感染症に該当し、その患者さんを診察してから7日以内に最寄りの保健所に「梅毒発生届」を提出しなければならない規則になっています。2019年1月よりこの「梅毒発生届」の様式が一部変更になり、新たに「性風俗産業の従事・利用の有無」の記載が求められるようになりました。このことによって梅毒発生のリスク要因が明らかになってきました。
私の所属する性感染症学会の先月行われた学術集会において、この梅毒発生届を元に東京・大阪での中間解析をしたところ、性風俗産業の従事・利用者の発生の割合が多く認められ、梅毒のパンデミックのリスク要因になっている可能性が明らかになりました。もともと、性風俗産業関連がリスク要因だと予想はされていましたが、この新しく変更された「梅毒発生届」によって実態が把握されやすくなったということです。また、妊娠中に梅毒に感染することにより胎児に発生する「先天梅毒」の赤ちゃんも増加しています。
性風俗産業もいろいろな業種があり、どの業種がどの程度リスクが高いのか、などは今後の調査で明らかになると思います。私のクリニックには性風俗産業の従業員の方や利用者の方が大勢いらっしゃいます。性感染症の検査を従業員の方に毎月義務付けている店舗も増えてきていますが、まだ少ないのが現状です。一概に性風俗産業が悪いということだけで済ませるのではなく、梅毒は他人事としてとらえず自分自身の問題として一人一人が認識していく必要があると思います。
約7年前から急激に増加している梅毒罹患者数ですが、今年は2020 TOKYO オリンピック・パラリンピックがあります。今後も梅毒患者数の動向に注目していきたいと思います。
厚生労働科学研究費補助金・エイズ対策政策研究事業 「HIV 検査受検勧奨に関する研究」 研究班、新宿区保健所保健予防課監修パンフレット:https://www.hivkensa.com/syphilis/img/%E7%AC%AC2%E7%89%88-%E3%82%82%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%EF%BD%9E%E5%A5%B3%E6%80%A7%E7%89%882018.pdf