A. クラミジア感染は否定的です。
クラミジアの検査には、クラミジアPCR検査とクラミジア抗体検査の2種類があります。PCR検査は、クラミジアが採取した場所にいるかどうかを調べる検査です。抗体検査は、過去にクラミジアに感染したかどうかを調べる検査です。現在流行中の新型コロナウイルスの検査にも、PCR検査と抗体検査があるのと同じで、PCR検査は現時点での感染の有無、抗体検査は過去に感染したかの有無を調べます。
今回のご相談は、不妊治療中の女性で、治療前の検査でクラミジアIgA(±)、クラミジアIgG(-)という結果だったとのことで、ご主人さん以外の男性経験は無いため、不妊治療先の病院の先生に、ご主人さんにうつされた可能性が高いと言われ、ご主人さんを問い詰めたところ、結婚以前にクラミジアに感染し治療したことが分かったということでした。一度生じた不信感はぬぐい切れず、ご主人さんがまたクラミジアに感染したのではないか、いまもクラミジアになっているのではないかと疑念を持ち、そこで、このIgAが(±)でIgGが(-)の結果の意味について知りたいということで今回の相談に受診されました。
クラミジアIgA抗体は、感染から2週間目で上昇し6カ月で消失します。クラミジアIgG抗体は、感染から1か月後に上昇し数年間持続します。そのことを踏まえて検査結果について考えてみると、このクラミジアIgA(±)は感染の初期の可能性があるため、最近の性行為について尋ねたところ、半年間性行為自体が無いとのことでした。したがって、IgA(±)、IgG(-)の意味は、クラミジア感染については否定的であると判断しました。そして、IgA(±)は偽陽性と考えます。偽陽性は血中のクラミジア抗体と似たなんらかの抗体に反応した可能性があると思います。もしご主人さんの協力が得られるのであれば、クラミジアPCR検査をしておかれると安心だと思います。
このように、抗体だけで感染の有無を判断するときには注意が必要です。不用意に陽性判定することは、患者さんを不安にさせ、さらには男女関係にも影響を及ぼす可能性もありますので、検査の意味や検査結果の意味について正しい知識を持っておくことが必要です。