A. バルトリン腺膿瘍の可能性があります。性感染症の菌が原因のこともあります。
バルトリン腺は、腟の入り口付近の左右にある分泌腺です。腟の入り口付近を潤わせて、性交時の潤滑を良くする粘液を分泌します。口の中に例えると、唾液を分泌して口の中を潤わせている唾液腺とだいたい同じと思っていただくと良いと思います。
バルトリン腺の導管の開口部は、腟の入り口付近にあり、なんらかの菌が感染すると、バルトリン腺の開口部付近で炎症を起こり、開口部が腫れて閉塞し、内部に膿がたまって膿瘍になります。腫れの程度は、腟の入り口付近がゴルフボールの大きさくらいに腫れあがることがあり、痛いので姿勢を崩して椅子に座る格好になります。
また、出産時の会陰切開などで、物理的にバルトリン腺の導管が切断されてしまった場合などでも、分泌腺が貯留して腫れることがあります。
腫れて痛みがある場合は、炎症が起こり、膿瘍を形成していることが多く、応急処置としてバルトリン腺膿瘍の内容物を注射器で吸引したり、切開して排液すると、小さくなって、腫れと痛みが和らぎます。必要に応じて、内容物を培養検査に提出して、抗生物質を投与します。起因菌は、淋菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、嫌気性菌が多く、クラミジアの報告例もあります。内容物を提出しない場合は、おりもので培養検査をします。
切開排膿しなくても、抗生物質の投与により腫れと痛みが一時的に治まる場合がありますが、再発する可能性はあります。
腫れが小さく、無症状なら経過を見ることもありますが、炎症や痛みの無い硬いしこりの場合は、稀にバルトリン腺癌が考えられますので、注意が必要です。