A. 偽陽性の可能性も含めて説明し、確認検査を実施します。
保健所やクリニック、妊婦健診や手術前の検査で行っているHIVの検査は、HIV抗原抗体同時スクリーニング検査法と呼ばれ、結果が「陰性」、「陽性」、「判定保留」のいずれかの結果が出ます。スクリーニング検査における「判定保留」は、「陽性」と同様に確認検査を実施します。「判定保留」か「陽性」となった方は、スクリーニング検査をしたところに問い合わせをしてみてください。
・結果が「陰性」の場合、①感染のリスクが無ければ「感染していない」と診断します。②感染のリスクがある場合や急性感染期を疑う症状がある場合は、ウィンドウ期の可能性があるため、HIV-1RNAを検出するNAT法による検査を実施するか、期間をあけて再度スクリーニング検査から行います。(ウィンドウ期:HIVの感染初期には、血液検査では陰性となり、感染していることが検査ではわからない時期のことを言う。現在多く使用されている第4世代スクリーニング検査のウィンドウ期は13~42日とされている)
・結果が「陽性/判定保留」の場合、本人へ結果とその意味について(偽陽性の可能性)を十分に説明の上、確認検査を実施します。
現在の確認検査は、ウェスタンブロット法(WB法)の抗体検査とHIV-1核酸増幅検査法(NAT法)が行われていますが、今後は新しい確認検査法に変更予定です。これについては、「性感染症トピックス・新しいHIV確認検査」で詳しく述べたいと思います。
実際には、HIVのスクリーニング検査で「陽性」となっても、確認検査で「陰性」となることがしばしばありますので、スクリーニング検査で陽性が出たからと言って、すなわち「HIV感染者」ということではありません。その先の確認検査をすることによって、偽陽性(本当はHIV感染者ではないが、スクリーニング検査で陽性となる)と判明する場合もあります。
実際に、国立国際医療研究センターの研究によると、手術前に行われた第4世代のHIVスクリーニング検査でHIVが陽性になった患者のうち、確認検査を行ったところ、わずか3%が真のHIV感染者であったという結果から、97%は偽陽性と判明しました。
このように、HIVスクリーニング検査は、真のHIV感染者を見逃さないために偽陽性率が高いのですが、このことは、精度が低いということではなく、偽陽性がある一定程度ある検査の方が見逃しが少ないので、スクリーニング検査としては優れているのです。
また、患者がろ紙に採血した検体を検査会社に郵送するHIV郵送検査の利用が増えていますが、日本では、郵送検査はプレ検査として位置づけられており、郵送検査で陽性と判定された方は、HIVスクリーニング検査から実施しなければならないと決められています。