A. 菌やウイルスの量、性行為によってできた傷、免疫の状態などが複雑に関係しています。
パートナーの男性がクラミジア陽性で、検査を受けに来た女性からの相談です。
検査の結果、女性も性器クラミジアPCR検査陽性でした。
パートナーの男性には、複数のセックスパートナーがいることがのちに判明し、自分だけがクラミジアに感染したことが分かり、他の女性も検査をしたようだが、陰性だったとのことで、どうして自分だけがクラミジアになったのか納得できない、という質問でした。
性感染症の菌ではなくても、菌が相手に感染するためには、以下の2つの条件が必要です。
①菌が相手に侵入する経路となる、傷口があること。
②その傷口に、大量の菌が侵入すること。
が必要です。
①について、ヒトは常にいろいろな菌に曝されながら生活しているので、もともと菌やウイルスに対して強力な防御機構が備わっています。その一段階目が、皮膚や粘膜の角質バリアです。この角質バリアに破綻している箇所があると、菌は容易に侵入することができます。
②について、角質のバリアが破綻している箇所から菌やウイルスが侵入しても、少ない量であれば、自己の免疫によって感染を防ぐことができます。いわば、2段階目の免疫バリアです。しかし、侵入した菌やウイルスの量が多かったり、免疫が低下している状態であれば、自己の免疫は戦いに敗れてしまい、菌やウイルスの侵入を許してしまう結果になります。
性行為という感染の機会があった場合に、今回の方のように感染が成立してしまう場合もある一方、しない場合もあるのは、性行為によってできる性器の傷の状態や、その時の免疫の状態など、複雑な要因が合わさって不運にも感染が成立してしまったことによると思われます。